「カタールとの国交断絶」についてわかりやすく【ニュース解説】
カタールの国交断絶についてわかりやすく解説
2017年6月5日、
「サウジアラビア、バーレーン、エジプト、そしてアラブ首長国連邦(UAE)の4ヶ国は、カタールとの外交関係を断絶し、同国との往来も遮断する」という発表をし、中東情勢を中心に、地政学リスクを高めることとなっています。
このニュースがどういうことなのか、
しっかりと理解しておきましょう。
国交断絶とは?
国交断絶とは、
国と国の関係において、交流をなくすことです。
今回の場合、サウジアラビア、UAE、エジプト、バーレーンの4か国は、カタール籍の飛行機や船が4か国の領空や領海を通ることを禁止としました。
さらに、4か国の国民がカタールを訪れることも禁止し、
4か国内に滞在しているカタール人に対し、国外退去を求めるなど、全面的に国家間の関係が崩れるものとなっています。
なお、この湾岸地域内の対立の歴史においても、この国交断絶が行われるということは非常が差し迫っているのでは、ともいわれています。
カタールはテロを支援していると批判した
今回カタールと国交を断裂すると発表した4か国は、
「カタールがテロ組織を支援している」とし、自国の安全を守るために、カタールと国交断絶すると発表しました。
サウジアラビアは、カタールが過激派組織「ISIS(イスラム国)」、国際テロ組織「アルカイダ」といった、テロ組織を支援していることを、今回の国交断絶の理由に挙げています。
☝カタールはこの主張を否定
この国交断裂は、一方的にカタールに突きつけられています。
カタールは、「事実に基づかない主張のため、正当化できない」と、反発しています。
今後、カタールが4か国との関係を修復するように動くのかどうか、
カタール、サウジアラビア、UAE,バーレーンを含む、6か国が、経済的、及び政治的な面で協力している、「GCC(湾岸協力会議)」はどうなるかなど、各国間の対応が注目されます。
カタールってどんな国?
カタールは、秋田県とほとんど同じ面積の中東に位置する国です。
『LNG(液化天然ガス)の世界最大の輸出国』であり、
日本のLNGの輸入額は全体の13%を占めています。
さらに、中部電力との結びつきも強く、東日本大震災の際、中部電力は、カタールからのLNGの追加供給によって、電力不足の危機を乗り越えることができています。
なお、2022年には、サッカーワールドカップが開催が予定されているうえ、日本サッカーでは有名な「ドーハの悲劇」の場所でもあります。
※なおこの報道の後、FIFA(国際サッカー連盟)は、カタールとは定期的に連絡をとっているというコメントをしています。
「イランへのけん制」の裏の意図も
今回の国交断絶は、「暗にイランをけん制しているのでは」とも言われています。
カタールの海上に位置する世界最大のガス田は、
イランのガス田とつながっているため、
開発においては、イランとカタールは連携が欠かせません。
さらに、OPECの協調減産においては、
サウジアラビアが譲歩した形で協力する形となったものの、
もともとサウジアラビアとイランは友好な関係とはいいがたいです。
カタールは、サウジアラビアとイランの対立に関しては、消極的な立場をとっていました。
ほかにも、
- サウジアラビアのゼネコンがカタールの工事を多く請け負っている
- UAEはカタールの天然ガスを輸入している
- カタールの富裕層から多くの出資を受けている
など、4か国にも大きなデメリットがあることを受け入れたうえでも、カタールとの国交断裂を決めたのは、イランに対してのけん制ではと言われる要因となっています。
原油価格や地政学リスクの高まりに注目
あくまで現在のところ、原油の生産量などが大きく変動する可能性は低いと見られていますが、地政学リスクが高まっていることは間違いなく、今後の原油価格の動向に市場の注目が集まります。
また、今後サウジアラビアとイランの緊張が高まった場合、原油輸送において、非常に重要な交通路であるである、「ホルムズ海峡」の状況に市場の注目が集まる可能性もあります。
ただでさえ、ISIS、シリア内戦と、多くの問題を抱える中東情勢の問題には、アンテナを張っておきましょう。