『パリ協定』離脱とは?知識0からでもわかりやすく【ニュース・時事解説】
「パリ協定離脱」についてわかりやすく
2017年6月1日、アメリカのトランプ大統領が、「パリ協定を離脱」を宣言しました。
なぜこの報道が、大きくニュースを騒がせているのか、相場にどのような影響を与える可能性があるのか、内容を見ていきましょう。
パリ協定とは、「全国参加」の地球温暖化対策の国際ルール
パリ協定とは、2015年に採択された、「地球温暖化対策の国際的な協定」です。
「世界200に近い国と地域が、温暖化ガスの排出削減という共通の目標に取り組む枠組み」であり、当時温室効果ガスの排出量を急増させていた、中国やインドを含む、シリアとニカラグア以外の196の国・地域が参加する、ほぼ「全ての国が参加する世界初の枠組み」でした。
「地球の未来を守る」という「国際社会の努力の結果」と考えることができます。
トランプ大統領は、協定内容が不公平と主張
トランプ大統領は、このパリ協定を離脱した理由として、「ほかの国がアメリカを経済的に利用する仕組みであり、不公平」と主張しています。
同時に、「米国は環境問題のリーダーの立場を保つように努める」と発言したものの、全国参加の協定を離脱した以上、それが世界に受け入れられる可能性は低いです。
「トランプ大統領は、世界的な枠組みよりも、自国のために孤立を選んだ」と考えることができます。
☝一説では、石炭業界からの支持を求めたのではという声も
ある世論調査では、アメリカ国内でのパリ協定に関する意見において、「離脱派が1割程度しかいない」という結果が出ています。
ただでさえ、「ロシアゲート」疑惑に揺れているトランプ氏であり、支持層である石炭の算出地域の支持率アップを狙ったのではとも言われています。
パリ協定離脱は、各国の批判の対象に
トランプ大統領のパリ協定離脱に関して、「国際的にパリ協定離脱を批判する状態」となっています。
EU(欧州連合)と中国が、「パリ協定」実行への協力関係の強化を発表したほか、
トランプ氏は「協定内容の再交渉」を提案したのにもかかわらず、ドイツ、フランス、イタリアの3首脳はそれを拒否、
仏マクロン大統領は、アメリカの学者に、フランスで一緒に働くことを呼びかける、
ついには、オバマ前アメリカ大統領が批判するなど、様々な批判を受けています。
ここには、このパリ協定が、アメリカや中国を含む、「全国参加協定」であることが、最も重要な点であり、これ以上離脱国を増やすと、協定自体が意味のないものになりかねないことに起因しています。
☝パリ協定自体は、すべての国にとってメリットとは限らない
「パリ協定」の前に結ばれた気候変動に関する国際的枠組みである、「京都議定書」は、先進国にのみ温室効果ガスの削減を義務付けていました。
一方「パリ協定」は京都議定書と違い、「すべての加盟国に対して、温室効果ガスの削減・抑制の目標が課せられています」。
すなわち、発展途上国のなかでも、このパリ協定をあまりよく思わない国は存在すると考えられます。
さらに、上記でパリ協定実行の連携を示した中国も、さらなる排出量の減少を受け入れる可能性は低いと考えられています。
そのなかで、世界のリーダー国のひとつともいえる、アメリカの離脱は、各国協力の足並みを乱す可能性を秘めています。
環境によい技術を開発する流れは変わらないか
アメリカがパリ協定を離脱しても、
「地球温暖化に対しての対策は、グローバルにビジネスを進める上では実行すべきと多くの企業は考えている」と受け取れます。
ウォルマートCEOマクミロン氏は「大変失望」とコメントがするなど、多くの有識者、経営者などからも、
パリ協定離脱を批判するコメントなどが出てきています。
これは、パリ協定離脱によって、地球温暖化対策を怠った場合、
他国企業などとの関係性が悪化する可能性があることなども、このような発言が出てくる理由の一つと考えられます。
原油価格に影響も
この離脱により、
「アメリカの石油関連、シェールガス関連の企業が、生産をさらに増やすことができるのでは」という懸念から、原油価格の下落を導いています。
さらに、OPECを中心とした、「原油の協調減産」に
悪影響を与える可能性を秘めており、実際相場において、原油価格が下落することとなりました。
国際関係に注目
今回の一件において、「アメリカが非難の対象になった」ことは否めません。
「すべての国が参加することに意味がある」協定を離脱したことは事実であり、今後様々な国同士の関係性に影響する可能性があります。
ただでさえ相場に大きな影響を与える可能性があるトランプ大統領です。
今後も、彼の動向には注目していきましょう。