「働き方改革法」の成立によって何が変わるのか?3つの焦点を誰にでもわかりやすく解説!
2018年6月29日、政府が現在の国会のなかで最も重要な法案と言われていた、「働き方改革関連法」が成立しました。
人口が減っていくことが確実視されているなか、「一人ひとりの生産性を高める」ことが狙いです。
この法律の変化によって、「働き方」そのものに大きな変化がある可能性があります。
今回の働き方改革法の成立によって、「どのようなことが決まったのか」「何が変わるのか」を学生にもわかりやすく解説します。
残業時間規制:「残業時間の上限」が設定された

残業時間上限規制
今回の改案によって、「1年あたりの残業時間が720時間までに限定」されました。
今までもこの残業時間に関する上限はなかったわけではありませんが、協定を結ぶことでこの残業時間の制限を外すことができました。つまり「事実上いくらでも残業をすることができる」状況になっていたのです。
今回の変更によって「その協定を結んだとしても、年間720時間を超えてはならない」ことが決まりました。
破った場合、罰金や懲役が科せられるようになったこともあり、本当の意味で残業時間の上限が設定されたことになります。
「Karoushi(過労死)」が世界共通語ともなるなか、長時間労働を規制させる法律ができたことになりました。
大企業では来年2019年4月、中小企業では2020年4月より施工されます。
☝年間での総残業時間の条件だけでなく、細かい規制もある

過労
また、この残業時間の上限が年720時間というだけでなく、
- 1か月あたりの最大残業時間は100時間未満でなければならない
- 月45時間以上の残業ができるのは年6回以内に収めなければならない
- 2~6か月の平均残業時間が80時間以内に収まるようにしなければならない
といった細かい制限もあります。
例えば、業界によっては、月によって業務の量が大きく変わる企業もあるでしょう。しかし「年間を通せば720時間以下だが、繁忙期に月120時間残業させる」などということは不可能です。
☝この法案が例外となる業界・職種もある

医者
なお、この労働時間規制は、すべての労働者に対して成立するわけではありません。
導入されてから5年間は以下の業界は規制の対象外となります。
- 運輸・自動車運転
- 医師
- 建設
ほかにも、研究開発業務(新商品の開発など)には、この規制そのものが適用されません。
☝施工されてからも守られない可能性もある
ただし、この残業時間の上限規制には、抜け穴も存在します。
例えば「1年間の残業時間上限720時間」には、休日に働いた分は含まれません。つまり普段の出勤日の残業を抑え、休日に働かせることで、この上限よりさらに長く働かせることができるのです。2~6か月の平均で月80時間という規制には休日出勤分も含まれることを考慮すると、「年間960時間まで働かせることは理論上可能」になってしまっています。
また、現在の日本の労働に関する法律は、
「実は世界的に見ると労働時間自体はかなり厳しい」のです。
しかし、かなり複雑な変わりに、「様々な部分で守られていない」ともいわれています。「サービス残業」をなくさない限りは、いくら労働時間の規制があったとしても意味がありません。
この残業時間の上限の設定が、実際にどのように機能するのかも注目されるポイントと言えるでしょう。
②『同一賃金同一労働』:「正社員」と「非正規社員」の待遇の格差を縮めようとしている

正規と非正規の格差
「正社員」や、アルバイトやパート、契約社員や派遣社員といった「非正規雇用」という「雇用形態にかかわらず、業務や成果には平等に給料を支払わなければならない」という『同一労働同一賃金』が制定されました。
日本の労働問題の1つとして、「正社員」と「非正規」に、給与面などで大きな格差が存在しています。
同じ仕事をしていたとしても、正社員なのか派遣なのかなどという「雇用形態の違い」によって、給与などの制度が大きくかわり、正社員のほうが有利になっています。さらに、非正規社員の貧困化も1つの社会問題となっています。
多くの企業はこの待遇の変更のため、「人事や賃金制度見直しが必須となる」こととなるでしょう
☝しっかりとした理由があれば、正社員と非正規社員に格差があっても構わない
仮に仕事の内容が同じであったとしても、何かそこに合理的な理由があれば、同じ業務を行っている労働者間の格差があることが認められます。しかしその格差の内容や、その理由を、非正規社員に説明しなければなりません。
また、この「合理的な理由」も、抜け道として使用される可能性を秘めています。
☝給料以外にも格差がなくされようとしている

ボーナス
また、賃金面以外でも「正社員と非正規雇用」の間には多くの格差があります。
例えば、正社員には、様々なキャリアアップのための研修や資格取得の支援が用意されていますが、非正規には業務上必要最低限のものしかない場合も多いほか、「休暇」「ボーナス」も正社員のみの場合が多いです。
このようなものも、合理的な理由がなければ、職務内容や業務と関係なく正社員のみに行っている場合、非正規社員にも行わなければなりません。
高度プロフェッショナル社員に「脱時間給」の導入が決まった
「脱時間給」とは、一部の労働者に対して労働時間の規制そのものから外し、成果で評価する制度のことです。
つまり、成果のみが評価の対象となることから、残業時間を含む労働時間に関する規制が一切関係なくなり、いくら働いても給料が増えるわけではないことになります。そのため数年前にも導入を検討されましたが、「残業ゼロ法案」として国民の多くの批判を浴びたこともありました。
今回、「高度プロフェッショナル社員」に対してこの脱時間給の導入が決まり、そのプロフェッショナル社員として
- 年収1075万円以上
- 金融ディーラーやコンサルタント、アナリストなどの一部高度な専門職のみ
が該当しています。
☝連続的に様々な業種が該当するようになり、結果的に実質的な給与削減になる可能性もある。
この脱時間給制度は、
- 適用された労働者が自らの意志で抜けることができる
- 対象者本人が同意する必要がある
- 年間104日の休日取得が義務づけられている
など、悪用されないようにかなり綿密に規制されています。
しかし、「どのような職種が高度プロフェッショナル制度に当たるのかがあいまい」と言わざるを得ません。
日本は欧米諸国に比べ、一人の労働者がどのような業務を行うのかが最初から決まっているわけではなく、営業部門の一部がマーケティング業務を行っている場面も多いです。
ほかにも「年収1075万円以上」という条件にも注意が必要で、例えば、高額な通勤手当がこの報酬に含まれる場合などによって、「実質的な年収は低い」人にも該当する可能性も残されています。
☝「労働時間で給料が決まる」という制度自体に限界が来ている
「一日8時間、週40時間」というような労働時間規制は、ベースは戦後の1940年台に制定されています。
そのときの労働者は、例えば工場勤務のようなブルーカラーが主体でした。
これを平たく言うと「労働時間によって、その労働者の成果を評価することができた」のです。
しかし、例えば「営業」「開発」「企画」のような仕事は、「長い時間働けば働くほど成果がでる」とは考えにくい仕事が増えてきました。
企業からすれば、「その労働者が出した成果から報酬を決めたい」というように考えます。
ある意味「時間でその労働者の給料を決める」ということ自体に、限界が来てしまっている面もあるのです。
【まとめ】働き方改革による変化
今回の働き方改革法制定によって、
- 残業時間の上限が設定された
- 正規雇用と非正規雇用の格差が小さくなろうとしている
- 脱時間給制度が導入された
という点が大きく変わった点となっています。
また残業時間の上限や脱時間給制度に関し絵は、「サービス残業」などが横行してしまっている日本においては、「どこまで遂行されるか不透明」な点もあります。そもそも法律が現状とあっているか微妙なため、今後も変更される可能性はかなり高くなると考えられるでしょう。
さらに、「正社員と非正規の格差是正」のために、「正社員の待遇を抑制する」ということもあり得るでしょう。
基本的に法律は現状に遅れて変更されます。
今後、世の中の早い変化に伴って、「働き方」も大きく変わってくることになるでしょう。